マーケティング用語でAIDMAというものがあります。アイドマなどと呼ばれますが、消費者の購買行動プロセスを説明する代表的モデルの1つです。Aは注意(Attention)、Iは関心(Interest)、Dは欲求(Desire)、Mは記憶(Memory)、そして最後のAは行動(Action)を指します。
ニュースリリースを手にするメディア関係者の心理も、このAIDMAに当てはめることができるでしょう。タイトルを見て興味をもち(=A)、リリース本文を読んで関心を深めていく(=I)。そして、残りのD→M→Aに移っていくわけです。
今回はAIDMAなかの「I=関心」にスポットを当てます。
というのもニュースリリースのタイトルなどが多少、稚拙でインパクトが弱くても、自分の担当するジャンルのものであれば読み進めてもらえますが、そもそも関心をもってもらえる内容でなければ、そこから先に進むことはないからです。
たとえば、本当に「美容分野では初めて」や「世界最高の品質」などであれば、それだけで注目を集めることは可能でしょう。しかし、通常、そのようなケースはまれです。もちろん、前回書いたように過大表現はぜったいに避けなくてはいけません。
では、どうすればメディア関係者の関心を引くことができるのでしょうか。
新商品発売に関するリリースを書くとしましょう。製品の特長や、機能、価格を書くのはもちろんのこと、「なぜ、いまその商品を発売するのか」「新製品を開発した背景には何かあるのか」なども盛り込むのです。
美容を例に挙げると、「美容師の人手不足」や「教育指導」、「環境への対応」などが業界の関心の高い問題のようです。この商品が発売されることで、これらの問題はこう変わる、と示すことができれば、記者は間違いなくD(欲求)、M(記憶)、A(行動)に移ります。心に響くからです。
あるいは、時事的なキーワード、社会との接点を感じさせる言葉を盛り込むことも手です。先に「人手不足」や「環境」を挙げましたが、ほかにも「少子化」「食糧問題」、いまだと「新型コロナ」などが、それらに該当するでしょう。
メディアは、いまの世の中の関心が高いことがらを取り上げたい、という欲求を持っています。それらと、新製品・新サービスが関連しているとなると、記者は「しっかりとリリースを読もう」となります。少なくとも目に留まる確率は高まるわけです。
「時代背景となぜ」を、そうしてそれが業界や社会に「何をもたらすのか」――キャッチ―な言葉を考える前に、これらについて固めておくことをお勧めします。